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書くトレーニングつて、何をしたらいいんだろう?一時間、原稿用紙に向かうような状態をつくってあげればいいのかな。
それて、テーマをあげればよいのだろうか?この四日間聞かせてくださったようなお話をしてくださったうえで、そのようにされたらいいんじゃないでしょうか?ここで意見が食い違ってしまうね。
読むトレーニングだけじゃなく、書くトレーニングを取りいれるべきだということには賛成する。
論理や構成のことを理解することもよいことだと思う。
君のいうようにそれをさせてこなかったことは、わたしの反省材料だね。
でも、論理や構成のことを伝えておいて、「さあ、書きなさい」といったら、書けるようになるんだろうか?わたしにはとてもそうは思えない。
それで書けるひとは、きっとそんなことをしなくても、はじめから書けたひとなんじゃないかな。
そうですかあ?わたしは、原稿用紙に向かう時間をつくれば、自然に書けるようになっていくと思うんですが、違ってますか?いや、一〇〇パーセント違っているわけではないとは思う。
自然に書けるようになっていくひともいるだろう。
でもね、そうなるための前提条件がある。
例を挙げて説明するよ。
教員になる前に、わたしはある会社の入社試験を受けたことがある。
その会社の入社試験には、小論文があった。
紙が配られて二〇〇〇字ほど書かなくてはいけないんだということはすぐわかったんだが、紙にはテーマが書かれていない。
何について二〇〇〇字書いたらいいんだろうと思っていたら、黒板にテーマが大書された。
書かれた文字は二つ。
そこには、「勇気」と書かれていた。
ちょっと、話をやめて君に聞こう。
この場合、二〇〇〇字書けるひとと書けないひとを分けたものがあるとすると、それは何だろう?また、同じ二〇〇〇字書いたひとの文章の出来、不出来はとこで決まったんだろう?書けるひとと書けないひとを分けたもの……。
何かな……。
ネタのあるなしじゃないですか?出来、不出来は、そのネタが良いかどうかで決まった。
どうでしそうだね。
書ける書けないを分けるのは、ネタの有無だと思う。
それから、出来、不出来のことだけど、良いネタであっても下手に料理すれば台無しだし、悪いネタでも料理次第ということはある。
その要素は無視できないけれど、でもネタが良いにこしたことはない。
ネタ、つまり書く材料が問題だ。
頭のなかに書く材料がなければ、何も書けないということですね。
書く場面を与えられれば上達する場合の前提条件というのは、「ネタがあれば」ですか。
じゃあ、そのネタというか、書く材料は、どうやってこしらえたらいいんでしょう。
そこなんだよ、自分自身の体験にネタが求められればそれもいい。
それから、話が堂々めぐりしそうなんだが……、ネタをもつためには、いろいろなものを読んで、いろいろなひとの意見やら体験やらを知ることも大切なんじゃないか。
いろいろなもののなかには、評論だけではなく、随筆も小説も詩も入ると思う。
本当は、文章だけじゃなくて、芝居や映画なんかもじゅうぶんネタになりうる。
実際、「勇気」という題の文章を書かされたときには、わたしは映画の話から書きはじめたよ。
ということは、先生は、こんなふうにいいたいわけですか?「書く練習が足りないことは認める。
論理や構成についても知っておいた方がよいのに、ほとんど何も伝えていない。
その点は反省しなくてはいけない。
けれども、やっぱり読むことも大切だ。
そうだね。
現代文イコール読解というあり方は、一定の反省が必要だと思う。
けれども、表現と読解というのは、深く関わり合っている。
表裏の関係にあると思うんだ。
ネタということに絞って説明したけれど、本当はその部分だけで関わっているわけじゃない。
読解をしっかりやれば、内容だけではなく、その文章のスタイル、論理構成なども自然に頭に入る。
それが自分の表現にいきるということはあるだろう。
また、表現の勉強をしっかりすることで、読んでいるときに、自分ならこのように考えるな、このように書くな、という目をもつことが可能かもしれない。
そうすれば、読解はもっと深まるだろう。
読むことと書くことは一つなんてすね。
うん、深いところでつながっている。
そんな意識で、読んだり、書いたりするといいと思う。
そうしてみます。
どうもありがとうございました。
いや、こちらもいろいろ気づかされることがあって、楽しかった。
またね。
「国語は、ほかのどの教科と似ていると思うか」、高校に入学したばかりの一年生を前に、まずそう問いかける。
これに対する反応で、その生徒が中学校まで国語をどのような教科と思って学んできたかが知れる。
「社会」と答える者がいる。
国語・社会は同じ「文系の科目」という先入観がそういわせることが多い。
漢字や語句の意味などをたくさん覚えたという印象がそういわせることもある。
「英語」と答える者もいる。
日本語の学習も、英語の学習も、ともに語学の学習ではないかというわけである。
むろん、すべてが間違っているということはない。
「数学」、「理科」と答える者には、ほとんど出会わない。
まれに「音楽」などという者もいる。
理由を聞くと、「感じることを大切にするところと、表現するおもしろさかおる点て似ている」という。
「文学」を中心に国語を考えてきたのかもしれない。
教師と生徒との関係をいえば、国語は実技教科に比較的近い。
たとえば、「体育」。
とび箱をとぶ授業で、教師はとび方を説明するかもしれない。
どうやったら高いとび箱をより美しくとぶことができるかと。
あるいは、教師自らがとんでみせることもあろう。
ハイレベルのとび方が生徒のため息を誘うこともある。
しかし、その教師の説明や模範演技と、生徒がとべるかどうかということとは、直接的に結びついているわけではない。
どんなにたくみな説明がなされても、それに対する生徒の理解がいかに正確であっても、あるいは、がこれ以上ないというとび方を披露しようとも、生徒本人がトライしてとぶということ以上の意味はない。
やってみなければ上達は望めない。
試行錯誤のなかから、自らつかむものの価値を知らないで、上達していくということはないと思う。
国語も同じである。
教師の説明、教師のすぐれた読みなどは、ちょっとしたヒントといった程度のものである。
それを記憶することよりは、それを生かして自ら読むということを大切にした方がよい。
試行錯誤する者だけが手助けの意味を知っていくという構造がある。
表現の場合も、事情は変わらない。
また、この知的実技教科の場合も、体育と同じくいろいろな種目があるが、どの種目においても、この基本は同じである。
さて、思春期にある高校生が、この知的実技教科を学び、さまざまな試行を繰り返すことにどんな意味があるのか。
それを考える前に、しばらく「思春期」という時期について考えたい。
高校三年間という学校制度の一区分で考えるより、人生の一区分をイメージした方が、この問題を考える場合に有効だと思われるからである。
「思春期には思春期特有の悩みかおる」などと表現されるときの「思春期」は、「青年期」とまったく同一の意味内容をもっているわけではない。
この場合の「思春期」とは、つまり、次のような意味で使われている。
「肉体的には成熟し、じゅうぶんに一人前(成体)でありながら、社会的には自分一人で生きていくことができない(許されない)ために、社会的には未成熟で一人前ではないとされる時期」。
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